闘病と乱闘 / 2022.10.26

今年の入院、最終日がやってきた。

眠って起きて体重測って朝食をいただいて残っている検査を終えたら娑婆に戻る！そんな日である。なんたる余裕、朝から素晴らしく天気がいい、それに添うように心も実に晴れやかだ。最後に、それなりに美味しい朝食を食べれたならもう最高じゃないか。そう思いながら、その時間を待った。

最後のご飯、朝食

無塩パン、卵とインゲンのソテー、果物（オレンジ）、ヨーグルトドリンク（ジョア）

最後にやってくれたよ。

終わりよければ全てよし、って言葉を知ってるかい？本気なのかい？トレーを眺めながら心の中で何度呟いたことか。うそだろ？と。何かの間違いかも知れない、もう一度よく見てみよう。

書いてるー。書いてるなー、無塩パンって。

この病院に入院してから何度か遭遇している無塩パンが、私はこの病院で出されるメニューの中で最も嫌いなのだ。「これはパンではない」と感想を書き殴り食べることを一切拒否した末、私には無塩パンを出さないようにするとの方針が過去出たほどに、私はこれを嫌っている。そうかそうか、最後にこれを出してくるのか。

無塩パンを出す理由を以前聞いたことがあって、まぁ早い話が塩分調整なんだけど朝食の塩分を減らして昼食や夕食で塩分がちょっと高めのものを出す流れだそう。それはね、仕方が無いことだと思う、それは解る。解ってはいるんだ。解ってはいるんだけど！今日もう退院するんだから普通のパンを出してくれよ…そう願わずにはいられないのだ。

結構しょんぼりしながら朝食と向き合うことになってしまった。それでも6年前に全力で拒んだ無塩パンだ、この6年の間に新しい技術によって革新的な進化を遂げているかもしれないと思い直し一つだけ封を開け思い切って食べてみた。

たった6年で何が変わるっていうんだい？あざ笑うかのように、そこには6年前に食べた衝撃のままのパンではない何かがいた。開発をさ、し続けて少しずつ進化していって知らぬ間に「あれ？なんか美味しくなってる？」ってなるのが日本の美味しさへの執着ではないのかい？これが最高峰なのかい？これ以上どうにもならないのかい？もう、卵とインゲンのソテーとオレンジを食べてジョアを飲むだけで終えてしまったじゃないか。

私をこんな気持ちにさせた今日の昼食とやらは一体何なんだい？そう思って献立表が貼り出されている場所で確認したら書いてあったよ。炒飯、カニ焼売って。よりによって…！私の好きな炒飯と焼売！食べないのに、今日はそれを食べることなく帰るってのに。何の因果だろうね、この身に向けられた祝福など本当は初めから無かったのかい？

夕食はどうなんだ、夕食は。そう思って再度献立表を確認したらカニ玉って文字が燦々と輝いていた。2食続けてのカニ！中華！味濃い祭り！信じられない、どうなってるんだ。

何故、今日退院するのか、明日じゃダメだったのか？いや、そういうことじゃないだろう。一刻も早く退院したかったじゃないか、大体食べたいなら家で食べればいいだろう。違う、炒飯と焼売のことでこんな風になってるわけじゃない、無塩パンへの恨みが膨れ続けて止まらないんだ。

そんなバカみたいなことを思いながら最後の検査「肺拡散能力機能検査」に挑み、会計を済ませ退院した。帰り道にレーズンロールパンを買ってしまったことを報告しておきたい。

入院中の日々