だまれ、小僧!
闘病と乱闘 / 2023.02.27
今年に入って最初の外来は、今年に入ってから半月以上待たなければならなかった。長い、あまりにも長い時間。どうなんだ、裏切られたりしないのか。期待しない方がいいのか。限りなくOKが出そうな雰囲気の中でやっぱりダメって言われるかもしれない。期待してはいけない。食べられません薬は止めませんと言われたとして、その時冷静にそれを受け止めることができるのか。出来るわけあるかー!あほかー!
日々頭の中で繰り返していたのは納豆解禁への勝利をイメージすること、そしてやっぱり無理でしたー!に備えての戦いシミュレーション。「ああ言えばこう言う」を様々なパターンで想定しながら実際言われた時に心が折れてしまわないよう強化していた。そうやって積み重ねられた地道な努力が明日を作っていく(どうした)。
もう私は食べる気満々だった。そう、期待しないように裏切られた気持ちにならないように一所懸命勤めながらも頭の中は裏腹。まずはー、納豆とご飯だよねー。って考えてた。なんなら毎日考えてた。鼻を掠める記憶の中の納豆。今再び私は取り戻すのだ、ただそう一心に思っていた。確信に変わっていた。とても身勝手に確信へと変化させていた。
11月の外来で初めて光が射した納豆への道、主治医は「他の同じようにこの病気の治療にあたっている人にも話を聞いて」的なことを言っていたが、12月にもほぼ全く同じセリフを聞いていたから、年が明けても同じセリフを言われたらどうしよう殴ってしまいそう…と思っていた。だから12月の時点で「来月も同じセリフ言ったら、もう勝手に納豆食べるから。」と伝えておいたのだ。だから年が明けてから最初の外来は暴れるか暴れるか、納豆食べられるかの戦いだった。
結果。
私は見事に勝利したのだ。納豆食べていいと、どうぞお食べくださいと。存分に満喫しやがれと、世界が祝福に満ちた鐘を鳴らしているかのように目の前が眩しく輝いた、あの瞬間。スタンディングオーベーションで迎えられた世界、扉は再び開かれたのだ。嗚呼、なんたる美しき世界。
もし納豆食べられることになったら、その時はお祝いに納豆を買ってあげよう!とルームメイト様に言われていた。私が狂気に満ちたスタイルで納豆を混ぜながら匂いを嗅いでいた事実を知る唯一の人。目の前で納豆食べない方がいいのか…と何度も考えてくれて、その度に「ダメだ!嗅がせておくれ!」と変態のような回答をぶつけられ困惑していた人。そして1月の外来終わりに回転寿司屋でランチをしようと約束していた人。
待ち合わせをして、回転寿司屋に入ってタッチパネルで注文しながら色々話し、寿司がぞくぞくと到着しては食べながらを繰り返しつつ話し、ある程度経ったところで
「納豆買って?」
待望の、その一言が世界に解き放たれた瞬間、再び祝福で満たされ寿司は歓喜の舞を踊り(踊らない)、湯呑みが喜び歌い(歌わない)、我々は感動の握手をしたのだ。
やっと後ろめたさのない納豆と再会出来る者と、やっと納豆を食べられる者にしか解らない空間、寿司を食べ終えたらスーパーに一直線だね!
「キャッキャウフウフ」なんて言葉がぴったりなテンションで私は再び納豆の食べられる世界へ戻っていくこととなった。約7年間の戦いだった。
しかし、主治医から「ダメだな、って思ったら再開するから。ワーファリン。悔いのないよう(食べておけ)。」と言われている。私はトップスピードで向き合いたい納豆の食べ方リストを出し、買っていただいた沢山の納豆と共に食べたいリストを出し惜しみすることなく毎日毎日飽きることなく食べる日々を送った。
「なに?アボカドと納豆だと?」となればアボカドを買いに行き、「キムチと納豆かぁ」となればキムチを買いに行く。回転寿司屋で納豆巻きを何よりもご馳走ですよこれは!と言わんばかりの表情で食べ、納豆餅って美味しいの…?と人に尋ねて試し、ずっと食べたかった納豆蕎麦も堪能した。
解禁になってから1ヶ月、本当に毎日食べた。嬉しくて毎日嬉しくて、明日の納豆はこれかな!何処かにめかし込んでお出掛けかい?と聞かれてもおかしくないご機嫌さで朝を迎える準備をしていた。
私はそれでも怯えていたのだ。2月の外来当日を迎えて、採血をして。何か数値に異変が現れてワーファリン再開!納豆は禁忌!とわずか1ヶ月で言われてしまうことを。あまり考えては飲み込まれる、そう思ってなるべく考えないよう明るく納豆を食べ続けていたが「玉ねぎも食べた方がいいかな…」と玉ねぎを頻繁に食べるようにしたり、そんなことをして果たして効果は…なんて考えないようプラシーボ効果だけを狙いながら日々を過ごした。
無事2月の外来では問題なく納豆生活は続行となった。
私はそれでも油断などしない。3月に何を言われても後悔しないよう、今日も明日も納豆を食べるのだ。まだまだ毎日新鮮な気持ちで美味しく納豆を食べている。
これを幸せと呼ぶのだよ。手の中に収まる、腹の底から湧き上がるような小さな喜び、幸福。
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